住職のつぶやき

アルバイト

「帰りの切符をなくしてしまったのでお金を貸してください。」「もう三日も食べてないんです何かください。」「(首からさげたボードをみせる)僕は話せません・・・」色んな理由で物乞いに来る人がいる。

今日は「アルバイトさせてください。」とやってきた。何年か前に草むしりをさせてもらったという。そういえばお寺さんたちの集まりで物乞いに来る人の話が出た時に「そういう時は仕事させなきゃ」と言われて、そういうものかと納得した直後に訪ねてきた不運な物乞いがいた気がする。今はお盆前で、すでに境内も墓地もきれいにしてあり、ほとんどむしる草などない。でも「じゃぁ、ちょこちょこ出てきている草を片付けてください。水分補給して、休み休みやって下さいね。」とペットボトルのお茶を一本渡した。

何年か前に真冬に来た人は「失業してしまって、これから七沢の方まで行くのだが・・・」と言って申し訳なさそうに無心した。少しのお金とお菓子、そして真冬だったので先代が遺した使ってない暖かい下着をいくつか渡した。それから一年ほどたって私の留守中にその人は訪ねてきた。「あの時はもう死んでしまおうかと思っていたのですが、あの時よくしていただいて、思い直して寿町のボランティアを頼りやり直すことが出来ました。」とお礼を言いに来たのだそうだ。これは住職になってから嬉しかった話のベスト1だと思う。

さて、アルバイトのおじさんはどうしているかな。いくら曇っていてもこの時期のこの時間帯(現在昼の二時半くらいです)に長時間の外仕事はさせられない。私もそこまで鬼じゃないから。

愚か者

読売新聞、面白いです。

原爆忌

今日は広島の72回目の原爆忌だ。原爆資料館を修学旅行先にして子供たち全員に見せるべきだと私は思っている。沢山の子供たちが見ることで核兵器の恐ろしさを知り核兵器の廃絶を思う子、放射能の恐ろしさを知り、放射能の無害化を生み出す人になろうと思う子が生まれるかもしれない。遊園地や一般の観光地は少し年がいけば自分たちで勝手に行くだろう。感性が豊かで素直に感じることができる子供のうちに原爆資料館に行き、唯一の被爆国の子供として見て学んで感じて考えて欲しい。

犠牲になった多くの尊い命の為に合掌。

法話

昨日大施餓鬼会が無事に終わりました。毎年の事なのに何であんなにバタバタしてしまうのか我ながら不思議です。きっと終わるとホッとしてそれで終わってしまうからかと。今年は反省メモを作って来年に備えようと思います。

今回の施餓鬼会でもそうですが、葬儀や法事の時にも一応お坊さんらしく法話をするのですが、あがり症のせいか、たいてい考えていたことがうまく話せずに終わります。元々仏教のお勉強が足りてないから引き出しが少ないというのが一番の原因かなとも思います。(だったらもっと勉強しろよと自分でつっこんでおきます。)

それでこの間コンビニで『あおぞら説法』で有名な寂聴さんの法話の大活字マガジンを見つけたので買って読んでみました。さすがプロの物書きでいらっしゃるから人の心をつかむ上手なお話です。仏さんのお話をわかりやすく皆さんが興味を持つようにお話になっています。「言わんとしていることは私と同じなのに(笑)なんて上手なんだ。みならわなくちゃ」と大変感心納得反省しました。そうは言っても簡単に同じようにはできませんねぇ。難しいものです。

その雑誌を読んだ直後に知人から西原理恵子さん(漫画家。『毎日かあさん』の作者。高須クリニックの高須院長の恋人?妻?)が書いた『生きる悪知恵』をいただきました。読んでびっくり。凄い。生きることの本質をついています。おげれつなところ乱暴なところも多々あるのですが「人が生きるってこういうこと」って教えてくれます。法話ってこれかなとも思います。興味のある方はぜひご一読ください。この本を読む前に西原さんの壮絶な半生がわかるものをチロっと読んでからの方がより楽しめるかもしれません。

寂聴さんより西原さんに感銘を受けている時点で…僧侶として大丈夫か私?

お葬式

今日はお葬式でした。(と、途中まで書いたまま時間は流れたのでアップした日と違います。)

出棺の時にそれまで気丈に振る舞ってきた一人娘が泣き崩れました。お嬢さんの幼い子供達が「ママ、泣かないで」と語りかけていました。「ママは自分のお母さんが死んでとっても悲しいの。でもね、もしあなた達がママより先に死んだらママはもっともっと悲しくてもっともっと泣くよ。だから絶対先に死んではいけないよ。」子供達にそう言いたかった。葬儀や法事の時、子供がいるときはこう言いたいと思うのですが、友人の自殺したお嬢さんの事が思い出されて泣けてきてしまうのでなかなか言えません。でも、こういう席に来ている子供には何も言わなくても、人が死ぬことがどんなことか少しはわかるのではないのでしょうか。大好きだった人がいなくなること。死んじゃうとすごく悲しいこと。子供達が簡単に自殺しないためにも子供をお葬式に連れてきて欲しい。命の大切さを教える大事な機会だと思います。

先日亡くなられた小林麻央さんはすごいですね。病床にありながら最後まで自分にできることを精一杯なさって。法話で「今ある命を大切に日々ご精進ください」なんてしたり顔で言ってますが、あれは自分にも言い聞かせているのです。いつどこで死ぬのか誰にもわからない。明日かもしれないし、ずうっと先かもしれない。でもいつかその日は必ず訪れるのです。一生懸命生きましょう。自殺なんてしなくても人は必ず死ぬのです。

宗祖弘法大師誕生会

今日は教津会という東寺真言宗、真言宗東寺派の寺院が参加している会の宗祖弘法大師の誕生会でした。ちなみに「タンジョウエ」と読みます。30名ほどの僧侶が一堂に会しお大師さんの誕生をお祝いしました。今年は三光寺がある地区が担当で会が行われたため、私もお役を務めることとなり、あがり症で小心者なので嫌な汗をかきながら参加しました。

「お大師さんは天才なんです。」お大師さんの研究をなさっている高木訷元先生が講義の中で断言されてました。合格祈願もお大師さんにお願いすればいいんです。ともおっしゃってられました。何故だか私にはこの言葉がすごく響いたのです。昨年末にふくらはぎにできた小さい腫瘍摘出する手術をしました。手術といっても日帰りの簡単なものでしたが、なんせ小心者なので「神経が傷ついたらどうしよう」「ケロイド体質だから傷が大きく残ったら嫌だな」「麻酔が効かなくて痛かったらどうしよう」「親知らずを抜いた時みたいに出血が止まらなかったら・・・」などなど心配が次から次へとわいてきたのです。その時思い出したのが「お大師さんは天才なんです。」と言う言葉でした。手術台の上でひたすら祈りました。「お大師さんの能力をこのお医者さんにお与えください。南無大師遍照金剛、南無大師遍照金剛、・・・」お陰様で最初の麻酔の注射を打つ時が痛かっただけで、痛みも、大変な出血もなく無事に手術は終わりました。その後も痛み止めが効いたのか傷が痛むことは全くなく順調に回復し、傷跡もケロイド状にもならず、今ではだいぶ薄くなりました。お医者さんが優秀だったのでしょう。仏さんのご加護もあったのでしょう。祈ることができるというのはありがたいことだと思いました。お大師様の生誕を心よりお喜び申し上げます。