住職のつぶやき

『愛の不時着』

お葬式が続いてなんとなく気持ちが沈んでいたので面白いドラマでも見ようと思ってちょっと前に世界的に流行した韓国ドラマ『愛の不時着』をもう一度見てみた。韓国の財閥の娘で事業家のユン・セリ(ソン・イエジン)がハングライダーの事故で北朝鮮に不時着しリ・ジョンヒョン(ヒョンビン)率いる中隊と出会い恋に落ちていく・・・というラブロマンスだ。一度見たドラマでも「面白かった」という記憶は残っているのだが詳しい内容はほとんど忘れていてほぼほぼ新鮮に楽しめてしまうのが情けない。北朝鮮の村のおばちゃんたちや、中隊の兵隊さんたちが個性的で面白い。北朝鮮の停電の話や外国からの客があるときには見える範囲は明かりをつけたり水道が出るようにするという話を聞いていたので本当なんだと再確認したり。冷静に考えると突っ込み処も満載なのだがそれも気にならないほど面白い。面白かったのに。全話見終わって一番印象に残ったのは主人公、美男美女のラブシーンでは無く、中隊の中の一番若い兵隊さんが韓国に来て耳がぴょこぴょこ動く帽子を買ってはしゃいでるシーンだった。そんな物で喜ぶほど幼い子が兵士となり戦わされるのかと思うと悲しくなった。金正恩がロシアに兵隊を送るという。あんな幼い兵士達が自国を守るためならまだしも、他国のしかも侵略戦争に加担しに行かされるのかと思うと不憫でならない。

気晴らしをするためにドラマを見たのに・・・

無くなって欲しくないもの

「俺は本は本屋で買う。中古書店で買うと作家に金が入らないから。」と言ったのは、先代住職である私の父だ。なるほどと思った。

私は本は電子機器ではなく紙媒体で読みたいので本を買うか図書館で借りる。父と違って中古書店でも買う。本がゴミにならない良いシステムだと思うから。でも、最近は本屋さんで買う。本屋さんが無くならないように。ポチっとすれば翌日手に入るのはわかっているのだが。本を見てペラペラめくって選びたいことも多いのだ。

最近の本屋さんは検索機械があるから直ぐに欲しい本を探してくれる。先日も本屋さんで店員さんに「この本が欲しいのだけど」と言うと、直ぐに探して目的の本のある書棚まで案内してくれた。

私一人がこんなことしてもたいして効果は無いかもしれない。でも、本屋さんが無くなったらやらなかったことを後悔するだろう。

もうすぐ衆議院議員選挙だ。私は戦争は嫌だ。自分で安全に後始末できない原子力発電も嫌だ。食料が確保されてないのも嫌だ。ものすごい格差社会になってきているのも嫌だ。投票は自分が望む暮らしができる国にするための唯一の手段なのかと思う。

お坊さんのお葬式

今月は僧侶のお葬式に三回出た。そのうちの二回は、大施餓鬼会に来ていただいたり行かせていただいたりしている、先代が築いていってくれた仲間寺のお葬式だった。

うちの先代が亡くなった時、私が不勉強で何もわからないうえに、もしもの時に助けてもらう約束をしていた同門のご住職に約束を反故にされ途方にくれた状況となった。その時に中心になって助けてくださった方々だ。お寺の住職のお葬式は色々な決まりごとがある。それは、宗派ごとに違いがあるようだ。お導師さん(法要の中心)、奉行(法要の進行等取り仕切る)、承仕(お手伝い)、職衆(中心になってお経を読む)、随喜(当日お見えくださるお坊さん。お経を読む)がいる。随喜以外を決めてお願いしないといけない。この人選からして私には誰にお願いして良いものかわからなかった。幸い唯一存じ上げていた父の師僧寺のご住職がご助力くださりなんとか乗り切ったのだった。

うちのお寺は宗派内では一軒だけ外れたところにあるため仲間寺はほとんど他派だ。今回亡くなられたお二方も他派だった。先代住職であった父が仲良くさせていただいていた事もあり、父の葬儀後、私が住職となってからもずっと助けてくださった。本当にありがたかった。お二方のご葬儀には職衆として参列し読経させていただくことができた。感謝を込めて読経した。

誕生会

6月15日、お大師さんのお誕生日。東寺の御影堂で誕生会の法要がありました。今年は宗派な役職に就いていることもあり私も出仕させていただきました。

前日も東寺で会議がありました。京都は気温35度というとんでもない暑さでした。午後の3時に会議が終わって駅前のホテルまで10分程歩いたのですが、途中で煮えてしまいそうだったので、お坊さんの格好だったのですがイオンモールの中を横切らせてもらいました。イオンモールありがとう。

でも翌15日は少し温度が下がって30度ぐらいでした。本坊から列を作って御影堂まで歩くのですが途中信者さんや幼稚園の園児たちが手を合わせて見送ってくれました。御影堂の中は涼しく、時折お参りする園児たちの「お大師様、お誕生日おめでとうございます。」というかわいい声が響き、何とも嬉しい気持ちになりました。

今回の法要では普段自坊では着ない色の衣が指定されていました。先代である父はよく本山に出仕していたので持っていたはずとタンスを探していると、たとう紙に包まれた衣が出てきました。表には父の字で「真翆…」と記され、探していた色の衣が入っていました。ありがたいことに父が用意しておいてくれたのです。「女が寺をやると言っても誰も認めてくれない。檀家さんだって認めてくれない」そんな風に言ってたのに。

若い尼僧さんも増えて、時代の変化を感じます。

お大師様、お誕生日おめでとうございます。これからも私達が幸せに暮らせますようお守りください。

空海展

奈良国立博物館で空海展をやっています。京都の本山に用事で出かけたついでに奈良まで足をのばして見てきました。
真言宗というのは国家鎮護、民、つまりは皆が幸せであるように祈る宗派なんだと再確認し、それを祈る真言宗の僧侶であることを嬉しく思いました。
印象に残ったのはお大師さんが弟子の智泉さんの死を悼む文章です。我が子のように慈しみ育ててこられた大事なお弟子さんが若くして亡くなってしまった。「悲しいかな、悲しいかな、…」お大師さんの悲しみが伝わって、その展示の前で涙するのは私だけではありませんでした。
友人の母上が90を越え認知機能も衰え、誤嚥も多くなり、食も細くなって、お世話になっている施設のドクターから胃ろうを作ることを提案されたという。兄妹でとことん話し合った。栄養がとれて前のように元気になるわけではない、ならば自然に枯れて行く方が良いのではないかという結論になった。「親より先に逝くという最大の親不孝は免れそうだよ」と話が締めくくられました。
人は生まれたら死んでいく当たり前のことですが、自分より後に逝くはずの者に先立たれるとお大師さんでさえあんなに悲しむのです。
順番は守りましょう。

足るを知る

最近驚いた事の一つにロシアが景気が良い、経済制裁なんて屁でもないというお話しがある。池上彰先生がテレビ番組でおっしゃっていた。自国内で完結できるから経済制裁されても大丈夫なんだと。私は勝手にあの寒い国は少しでも豊かになるために暖かい土地を手に入れようと昔から近隣諸国への侵略を試みているのだとばかり思っていた。エネルギーでも食物でと自給自足ができるならよその国に手を出さなくてもいいんじゃないですかね?

住職になって間もない頃「ベンツに乗ってシャ○ルのスーツ着て、ブランド物のバッグからブランド物のお財布取り出して『うちはお金がないから(お寺にお金を)納められないんです』って言うんだよ。」と今は亡き従兄に愚痴ったら「そりゃそうだよ。そういう生活をしたいからお金がないんだよ。」とあっさり言われた事を思い出す。