母親

母親

最近事情があって8050問題の家庭のおばあちゃんTさんのお手伝いを時々している。今日も40過ぎた息子が入院するための物をそろえるのを手伝って欲しいと頼まれて副住職と二人でTさんの買い物に。この辺りは車が無いと買い物に行くのも大変だ。それでもTさん、いつもは歩いてどこへでも行っている。車の窓から外を見て「熱がある時、病院に歩いた行って帰り、道を間違えて道に迷ったのがこの辺り」と笑いながら話す。80すぎてよくまぁあんなに歩けるものだと感心している。さすがに今回は買うものも多く我々の出番となった。少ないお金の中から息子の為にと買いそろえる。一通り買い終わって一旦帰宅して病院から渡されたプリントを見ながら確認。マスクを買い忘れていた。いつも買い物にいくFという店が安いからそこに行きたいというのでそこに行った。

Fで買い物をしているとその店で働いているMさんにばったり出会った。Mさんはフィリピンの人で亡くなったお子さんに戒名を授けて欲しいと数年前に寺を訪ねてきて、その後、年回事にやってくる。話をしているとこちらまで暖かくなるそんな人柄の人だ。私だとわかるとすごく喜んで「訪ねて行こうと思っていた」と言う。お位牌の字が薄くなってしまったからどうしたらいいか相談したかったと。今日はちょうど亡くなった息子さんの誕生日でどうしようかと語りかけたところだったと。メールアドレスを名刺に書いてもらった。家に戻ってメールを書こうとして(まてよ。日本語読めるのかな?)と疑問が浮かんだ。あまりに流暢に日本語しゃべるので外国の人なのを忘れていた。ひらがなで書いて、つたない英語で書いてメールした。ちゃんと伝わりますように。

帰り道、寺からお客さんが来ているとの連絡。大急ぎで寺に戻ると昨日法事を行ったY家のお嫁さんが息子さん二人を連れてきていた。息子さん二人は保育園児。お兄ちゃんの方が何か話したい事があるようだがなかなか話し出せない。ようやく出てきた言葉が「ごめんなさい」???「何がごめんなさいなの?」と聞き返した時にはママに抱きついてもう泣いている。なんとか聞き出すと、昨日法事の始まる前に寺に置いてあるおもちゃで遊んでいて壊してしまったという。ママの説明によると昨晩、夜寝る時にいきなり泣き始めた。理由を聞くとお寺のおもちゃを壊して黙って帰ってきたと言うのでじゃぁ明日ごめんなさいしに行こうとなったそうだ。保育園でも先生に「今日は帰ったらお寺にあやまりに行くんだ」と話していたという。ちゃちなおもちゃなのですぐに動かなくなる。壊されても何の惜しげもない、そんなおもちゃのためにずっと心を痛めていたのかと思うといじらしくてかわいくて笑いながらも涙が出てきた。「物はいつかみんな壊れるのだから気にしなくていいよ。」「ごめんなさいができて偉かった。」とほめることしかできなかった。副住職が、壊れたというおもちゃをちょっといじるとすぐに動くようになった。「ほら、大丈夫、動いたよ」というと顔が一瞬で明るくなった。仏さんが正直に言ったご褒美におもちゃを直してくれたんじゃないかと思う。なんていい子に育てているんだろう。

色々な子供、母親を見た日だった気がする。

Tさんの息子さんが回復して立ち直りますように。Mさんの息子S君、ママを見守ってあげてね。Yさん、いいお母さんですね。

勉強になるなぁ。