カルガモ救出

カルガモ救出

今朝早く電話が鳴った。7時前だった。どなたか亡くなったお知らせかとドキドキしながら副住職の電話応対に聞き耳を立てているとどうも話が違いそうだ。「(檀家さんの)Hさんからで、今寺の前にいるんだけどカルガモの雛が側溝に落ちたから助けるのを手伝って欲しいって」すぐに悠歩と三人で外に出るとHさんと作業着のお兄さんが道路脇の側溝の網を持ち上げのぞき込んでいる。カルガモが雛を連れて道を渡ろうとしていたので車を止めて道を渡らせたのだが雛が数羽側溝の網をすり抜けて落ちてしまったという。溝の奥からピーピー雛の鳴く声が聞こえる。でも奥に入ってしまっていて姿は見えない。何かいい手はないかと私たちがオロオロしていると作業着のお兄さんが素早い動きで一羽救出した。Hさんが受け取ると川に投げ込んだ。かなりの高さだったが着水すると雛は親カモの元へ泳いでいった。まだ数羽溝に残っている。声はすれども姿は見えず。通勤時間で交通量も多い。消防署に電話をしてみた。「誰かが飼っている物なら救助にいけるが野生の物は救助の対象外」とのこと。次に警察署にかけてみた。とりあえずおまわりさんが来てくれることになった。Hさんは仕事に行き、夜勤明けの作業着のお兄さんは声をたよりに別の網やマンホールの蓋を持ち上げ探し続けた。川を見るとカルガモのお母さんは雛たちを連れ下流へと移動を始めていた。ちょっとした堰のようになっているところで怖じ気づく雛が一羽、また一羽と母カモに促され下流へと飛び込んでいった。全部が下に降りると母カモは子供らと共にどんどん下流に泳いでいきやがて見えなくなってしまった。側溝からは時折雛の声が聞こえるのだが姿は見えない。と、そのときマンホールを開け探していた作業着のお兄さんがまた一羽捕まえた。洗濯ネットに受け取って川を見に行ったがやはりカモたちはいなくなったままだった。洗濯ネットに入れた雛をぶら下げ寺を出て下流まで見に行ったがカルガモ親子の姿はなかった。がっかりして寺に戻るとようやくおまわりさんが到着。事の次第を説明するとおまわりさんが下流を探してくれることになった。見つからなかった時は自然の生き物なのでそこで川に放すということで雛を連れていってくれた。いつの間にか雛を救出してくれた作業着のお兄さんはいなくなっていた。作業着の胸には『甲斐組』?という名前の刺繍が入っていたと思う。判断力、行動力がすごいなぁと感心した。雛のために夜勤明けにもかかわらずこんなに力を尽くしてくれる、きっといい仕事をする人に違いないと勝手に思い込んだ私です。お兄さんに仏さんのご加護がありますように。

今朝7時頃寺の前を走った自動車の運転手さん。「何やってんだ!危ないだろ!」と思われたと思います。『カルガモの雛、救出大作戦』のまっただ中でした。ごめんなさい。